スピッツのアルバムを新しい順に紹介するよ① 小さな生き物(2013年)

僕の大好きなスピッツのアルバムを新しい順に紹介していきますよ。

 

まずは最新アルバムの「小さな生き物」から。

 

 

曲数:13曲

概要:

東日本震災後に初めて発表されたアルバム。最近はあまりなかった生と死について想起させる曲が多くて、やはり大災害の影響が感じられるアルバム。

それは草野正宗本人も、大きな事件、特に人が亡くなるような事件があれば影響を受けざるを得ないと言ってるように。

 

全体を通してトーンは大人しめで、三日月ロックから続いてきたキラキラした感じは後ろに追いやられて、ちょっとノスタルジック。何ていうか夏の林間学校を思い出すような感じかな。

 

スピッツには珍しくメッセージ性が強い曲がおおいんやけど、全然押しつけがましくなくて、そっと寄り添うような一緒に歩んでくれるような、ああ、いつものスピッツやー、て感じです。

 

曲の中に見え隠れする生と死の世界がぐっと近づいたような表現は、これが震災の後に作られたアルバムだからなんだろう。誰かがAmazonのレビューで、「亡くなった方への鎮魂歌であり、生きている人たちへの応援歌」だと書いてたけど、まさにそのとおりだと思います。

 

 

曲紹介:

1.未来コオロギ

のっけからとんでもないのを持ってきたなー、という一曲。

ドラマチックなテツヤのギターで幕を開けて、いつもより力のある正宗のボーカル、目立たないけどいつもどおりしっかりと曲を構成しているドラムとベースが絡み合って、小曲ながら存在感が抜群なオープニング曲。そして歌詞が凄い。むっちゃ凄い。

「消したい印 少しの工夫でも 輝く証に変えてく」

とか

「つながりを確かめるために 片道メール送ってるの?顔を上げて遠くを見てくれよ 生き返った鳥の群れを」

とか、ググっと胸をしめられるような、こんな歌詞書ける人ってこの人しかおらんやろってくらい凄い。

 

そして曲を通して後ろで鳴り続ける印象に残るギターの音が悲しみや怒りや希望を聴く人の心に思い起こさせ、このアルバムのコンセプトを決定的にしている。

実は正宗はこれを1曲目に持ってくるつもりではなかったらしいが、なんとなくわかる気がします。

 

未来コオロギ

未来コオロギ

 

 

2.小さな生き物

アルバムのタイトルチューン。不動産屋のCMソングにもなってたから知ってる人も多いだろうと思います。「まーけないよ」て始まりがすんごいキャッチーやけど、実はそこまでポップな曲ではない。意外とベースがきっちりとなっていて、骨太な感じもチラッと伺える。歌詞もすごく優しくすごく前向き。

 

小さな生き物

小さな生き物

 

3.りありてぃ

ハードロックな演奏と正宗のボーカルとメロディと歌詞があってないなあと個人的には思う。ハード路線でいくならもっと突き抜けてほしいなと。ただこのアルバムの中に入れるとなるとこれが限界なのかもしれません。

 

りありてぃ

りありてぃ

 

 

 4.ランプ

前曲から一転して穏やかでキレイなメロディが気持ちいい曲。アコースティックな柔らかい響きでほっとするような感じ。歌詞もとても叙情的で一聴するとセンチメンタルなんだけど、実は原発事故への批判を暗喩しているようにも見える。

「ただ信じてたんだ無邪気に ランプの下で 人はもっと自由でいられるものだと」

「傷つけられず静かに 食べる分だけ耕すような生活は 指で消えた」

スピッツなりのポリティクスな主張なのかもしれません。

 

ランプ

ランプ

 

5.オパビニア

また難解なタイトルですね。古代生物だとかなんとか。ミディアムテンポのロックな曲です。僕のイメージでは4月の終わりとか5月のはじめくらいのさわやかな季節の感じですね。短編小説みたいにストーリ性のある歌詞で構成されていて聴く人それぞれに物語をイメージさせるような作り方はロビンソンと似ているかもしれません。

 

オパビニア

オパビニア

 

6.さらさら

このアルバムのキラーチューンですね。タイトル通りさらさらと流れていくメロディを追っているとあっさりしているように見えて実は作りこみ具合が半端ではない。

テツヤのアルペジオから始まり、続いて正宗のボーカル、崎ちゃんのドラムス、リーダーのベースと広がりを持たせながらイメージが膨らんでいく。

それぞれのパートがそれぞれの主張をしているけど曲全体としてまとまりをもっているのはさすがスピッツと思える。特に、あまり前には出てきていないけれど、ドラムスの畳みかけるような演奏はこの曲の要だろう。そして相変わらずこの人以外には引けないだろうという情緒的なギター。淡々としながらもところどころで前に出てくるベース。そして正宗の渋みを帯びたボーカル。何もかもが素晴らしい一曲。

歌詞もまた素晴らしい。おそらくは亡くなってしまった人とのひと時の邂逅、眠りにつく前の瞬間だけでもそばにいてほしい。後半ではその人の魂を解放するために「湖」を目指しますが、最終的には「悲しみは忘れないまま」なんですね。やっぱり震災の影響か生と死のはざまにいる人を描いた、そんなイメージの一曲です。

 

 

さらさら

さらさら

 

7.野生のポルカ

なぜかアイリッシュポルカ。楽しんで演奏しているのがよく伝わって来ます。特にギターでこんな表現できるんだっていうくらいせわしなく流れていくメロディーが面白い。

「餌に耐えられずに逃げ出してきたので」

「純粋そうなそぶりで生き延びてきたので」

なんて自虐的な歌詞もなかなか素敵です。

 最後のソウルフラワーユニオンとか亀田さんも参加するコーラスは圧巻。

野生のポルカ

野生のポルカ

 

8.scat

スピッツにしては珍しいインストゥルメント。scatって名前忘れちゃったけど姉妹でやってはるあの方たちがぱっと出てきて「夜明けのスキャット」が頭に浮かんるーるーるるるーとなりそうですが、全然ちがいました。かなりのハードロック。メンバーがすごい真剣に引いているのが伝わってくるかっこいい曲です。

 

scat

scat

 

 ちょっと疲れてきたんで後半に続きます。