スピッツのアルバムを新しい順に紹介するよ② とげまる(2010年)
僕の大好きなスピッツのアルバムを新しい順に紹介していきますよ。
次は2010年発表の「とげまる」です。
曲数:14曲
概要:
前作の「さざなみCD」よりもロックな感じが増したアルバム。すでに発表してきた曲が多く収録されていて一曲一曲力強い。
内容的には純粋にメンバーがやりたかった音楽を追求していったらこうなりました、的なアルバムだと思います。かなりチャレンジングな曲が多くて、まだまだこれからだという意気込みを感じます。ちょっと疲れてしまったなって人たちに向けられたメッセージがたくさん詰まっている。そんなアルバムです。
曲紹介:
1.ビギナー
派手なドラムとギターの音から始まりながらAメロに入るとスーッと静かにボーカルが入って一気に曲の中に入り込ませる全体的にはミディアムテンポなロック。
Cメロへ移ってからさらに大サビへと向かう盛り上げ方があまりにすごいので「いや、そんなテクニック持ってて全然ビギナーちゃいますやん」という突っ込みを入れたくなる。
また、草野マサムネの書く歌詞はいつも抜群である。
出だしの「未来からの無邪気なメッセージ 少なくなったな あいまいじゃない優しさも記憶に遠く」とか、Cメロの「幼いころの魔法 心で唱えたら 安らげることもあるけど」とか、メインリスナーであろう30代オーバーの世代にはグッときますね。
スピッツ - 「ビギナー」(「とげまる20102011」より) - YouTube
2.探検隊
スピッツ自身のことを描いた曲。4人乗りの筏で川下りをしてるのが目に浮かびそうな感じ。すごく楽しそう。
3.シロクマ
さわやかなギターのイントロと涼しげなボーカルと実はけっこう叩いているドラムスが素敵。自分のイメージは疲れはててしまったサラリーマンの歌やな。
「ちょっと遠い景色簡単ではないけど 瓶の底のほうに残った力で」
「何となくでは終われない 星になる少し前に」
いつものように「まだまだここでは終わらない」という思いが詰まった一曲。
4.恋する凡人
さわやかなシロクマから一転してハードロック風。ベースとドラムスが前面にでている曲調ながらボーカルが入るとああスピッツ!となる。正宗の声は良くも悪くもスピッツがスピッツであることを決定づけてしまう力がある。
「消えたふりした炎でも 火種は小さく残っていた」
「定まっている道などなく 雑草を踏みしめていく」
ここでも終わりそうで終わらない、あくまでも前に進んでいくというスタンスを感じられる、聞いていて元気になる曲だと思います。
5.つぐみ
つぐみっていうのは渡り鳥で長距離を移動する割に体が小さくて雀くらいの大きさなんだそうです。
小さな体で海原を渡っていくという姿がきっと正宗の心をとらえたのでしょうか。
ちなみに僕はつぐみと聞くとマンガの「美味しんぼ」で山岡史郎が海原雄山に罵倒&説教されるシーンを思い出します。これはつぐみは禁鳥で本来は狩猟してはならない鳥なんですけど、士郎が何も考えずに一口食べてしまってから気づいて、ってどうでもいいですね。
バックで流れるピアノの旋律が印象的で曲の世界に引き込まれてしまいます。新月ってまあ月がない暗い夜のことですけど、この曲にこのタイトル。よく思いつくな。
花の写真
珍しくカントリー調な曲。ポップなメロディと情緒的な歌詞が特徴なこじんまりした曲。ギターで弾き語りしてみたけどカントリーソングってリズムとるのが難しくてコード進行とボーカルを合わせるのが結構つらい。
「小さなカメラがつないでる 切れそうで切れない細い糸」
「街路樹が騒いでる音の中 靴ずれの痛みも気にしない」
日常を切り取ったような情景が目に浮かびます。
幻のドラゴン
これは難しいな^^ なんなんだろう?ドラゴンって。闘争心?プライド?なんか男ならわからないでもない何かについて歌ってるんだと思います。
曲はテンポよくザクザク進んでいきます。2人のギターが追いかけあったりしててなかなかスリリングな場面も。地元の坂道を登るときによく聞いています。
TRABANT
荒野の一本道を古い車で走ってるような曲。なんだろう。イメージは日本じゃないな。
聞かせてよ
メロディがとてもきれいで歌詞も毒気がなくてほかの人の曲を聴いているような気になる。男だとちょっと苦手かもしれない。いい曲なんですけどね。
えにし
これはとんでもない曲です。僕的にはこのアルバムで一番の曲です。ギターとベースとドラムスでハイテンションなバンドサウンドが全開、正宗節も全開。
「伝えたい言葉があふれそうなほどあった だけど愛しくてわすれちまった」
「美しい世界に嫌われるとしても それでいいよ 君に出会えてよかった」
うーむ。素晴らしいですね。全体を通してスピッツを体現した曲ではないだろうか。
若葉
ロックな『えにし』からバラードへ転換。あー、これはスピッツですね、って言う一曲。センチメンタリズムの中に少しだけ棘のある歌詞。
『ずっと続くんだと思い込んでいたけど 指の隙間からこぼれていった』
気持ちの良いメロディーでいつまでも聞いていたくなります。
どんどどん
ボイスチェンジャーを使ったりドラムスとベースで特徴のあるリズムを刻んだりとかなり実験的。なのにサビはいつものスピッツなのがちょっと僕は残念だったかなあ。もっと 変なのをお願いします。
とげまるのラストはこの曲です。
明るいメロディーと前向きな歌詞。演奏もみんな楽しそうです。特にギターが前面に出てて気持ちの良い曲です。
三日月ロック以降のスピッツのアルバムはアップテンポでテンションの高い曲で終わることが多いですが、これもそうですね。小さな生き物の『僕はきっと旅に出る』しかり、スーベニアの『みそか』しかり。
共通するのはここで終わりじゃない!これから始まるんだと言う強いメッセージ。
昔はセンチメンタルな曲で終わらすことが多かったんですけどね。それはそれでひとつのアルバムの終わらせ方ではあるけれど、スピッツのテーマである再生を最後に持ってくる方がしっくりくる。
素晴らしい曲だとおもいます。